不眠と富眠

「ふみん」と耳にすると、誰もが眠れない「不眠」を思い浮かべると思いますが、その一方で私たちは、非常に良い睡眠を「富眠(ふみん)」と呼んでいます。
これは、もっと睡眠を理解し睡眠の力を活用していただきたいとの思いで私たちがつくった言葉です。「よい睡眠をとる」ことで「風邪をひきにくくなる」とか、「やる気・集中力が出てくる」、「前向きになる」など日中のパフォーマンス向上が期待できます。

反対に、睡眠不足の状態が続くと、ガンや認知症などの大きな病気になるリスクが高まるだけでなく、日常生活では風邪をひきやすくなってしまいます。
また、食欲が止まらず、ついつい食べ過ぎてしまい太ってしまうリスクも高まります。さらに、お肌の水分量が低下し、お肌の調子も悪くなってしまいます。怒りっぽくなったり落ち込みやすくなったりとメンタルヘルス面に悪影響を及ぼす、注意力や集中力が低下してミスを起こしやすくなるなど、さまざまな研究から明らかになっています。

富眠になるために

1.体内時計を整える
平日にあまり睡眠時間をとれない分、休日に遅くまで眠って睡眠不足を解消しようとしていませんか。実は、この休日の朝寝坊は睡眠不足を解消するどころか、逆効果で睡眠不足をひどくしてしまうのです。眠りに落ちる時刻と朝目覚める時刻の中間の時刻を「睡眠中央時刻」と言い、この睡眠中央時刻が平日と休日とで1時間以上ずれてしまうと日中の眠気が強くなると言われています。
これは、人が持つ“体内時計”が乱れてしまうためです。“体内時計”が、日中は元気に活動して夜はぐっすり眠れるように、睡眠と覚醒のリズムだけでなく自律神経や体温・血圧、ホルモンの分泌などをコントロールしています。
朝寝坊や夜更かしなどによって、睡眠と覚醒のリズムがずれてしまうと、体内時計がコントロールしている自律神経や体温・血圧、ホルモンの分泌周期などもバラバラになってしまいます。そのため、日中の眠気が強くなり、夜の睡眠の質が低下して、睡眠不足が悪化してしまうのです。
体内時計を整えるには、先ほど説明した毎日の「睡眠中央時刻」を揃える。つまり、平日も休日も就寝時刻と起床時刻を同じにしましょう。もし日ごろから睡眠不足を感じていたら、休日に遅くまで寝て睡眠時間を長くするのではなく、休日もいつもと同じ時刻に起きて体内時計を整えてください。
また、朝の過ごし方も大切です。体内時計は24時間よりも長いので、そのために地球の自転の24時間とずれが生じてしまいます。そこで、朝の太陽の光を浴びることによって、このずれを調整されるのです。さらに、規則的に食事をとることも大切です。食事をとることも体内時計に影響を与えることが分かっています。



2.昼に睡眠圧を高める
昼は「睡眠圧を高める」ことです。睡眠圧とは、「眠ろうとする力」で睡眠圧が高まっていると、夜ぐっすり眠ることができます。
睡眠圧を高めるために、日中しっかり活動することが大切です。ウォーキングやジョギングなど軽~中程度の有酸素運動ができると理想的です。
ただ、無理でも、仕事や家事の中で意識して体を動かすことで、睡眠圧を高めることができます。
ただし、「昼寝」には注意が必要です。日中に眠気があるとき、昼寝をすることで頭がすっきりします。
しかし、昼寝をしすぎると睡眠圧が下がってしまうのです。昼寝の時間は20分以内にして、15:00以降は避けましょう。昼寝の前にカフェインをとると、カフェインの覚醒作用が20~30分後に効き始めてスムーズに目覚めやすくなります。昼寝の取り方に注意して、睡眠圧を高めることを意識してみてはいかがでしょうか。



3.夜の過ごし方に気をつける
睡眠不足なのにふとんに入ってもなかなか寝つけないということはないでしょうか。実は、夜の過ごし方しだいで、眠気が起こったり、反対に眠気が来なくなったりします。眠気が来なくなるような過ごし方をすると、寝つきだけでなく睡眠の質も悪くなり、睡眠不足がひどくなってしまうのです。
夜の過ごし方で気をつけないといけないのは、「明るい光を浴びないこと」、「リラックスすること」です。夜に明るい光を浴びてしまうと、脳が昼と勘違いしてしまい、体内時計が遅れてしまいます。睡眠ホルモンと言われるメラトニンの分泌が抑えられ、眠気が来なくなり、睡眠の質も下がってしまいます。
夜はリラックスすることも大切です。リラックスしているときは、副交感神経が優位になっていて、全身の血流も良くなっています。血流が良くなると、手足の皮膚の血管が拡張することにより放熱がスムーズになるので体の深部の体温を下げてくれます。この深部の体温が下がり始めると眠気が生じます。ゲームやスマホで頭が興奮していると、深部の体温が下がらず眠気が生じにくくなってしまいます。
ほかに夜のリラックスにおすすめなのが、「お風呂」で少しぬるめのお湯につかることです。熱いお湯は刺激となり交感神経が優位になるのですが、ぬるめのお湯は体をリラックスさせることができます。40℃程度のぬるめのお湯に10~15分を目安に入りましょう。リラックスできるだけでなく、深部体温も少し上げてくれます。深部体温がいったん上がると、そのあと上がった分下げようと血流が良くなるため、そのまま大きく下がりやすくなります。そのため、眠気も起こりやすくなるのです。
このように、睡眠は夜だけ気をつければ良いのではなく、朝から昼の過ごし方も大切です。ぐっすり眠って、朝すっきり目覚めることができたなら、とても気持ちいいですよね。
以上の3つのポイントを意識して、「富眠」を手に入れましょう。

子どもの睡眠

子どもたちにとっての睡眠は、身体の成長だけでなく、日中のパフォーマンスにも関わっていますので、将来のためにもとても大切なことです。
子どもたちの睡眠不足が続くと、授業中に眠くなりやすくなることに加えて、イライラしやすくなる、集中力が続かない、といったことが起こる可能性があります。また、勉強した内容が記憶として脳に定着するのも眠っている間と言われています。
そのことからも、これからは「寝る間を惜しんで」ではなく、「眠りを活用すること」が子どもたちにとってとても大切になってきます。
ただし、残念ながら私たちは睡眠不足の子どもたちが非常に多いと感じています。その理由としては、弊社の睡眠講話(出前授業)でとっているアンケート調査結果※では、「学校がある日の午前中、授業中にもかかわらず眠くて仕方ないことがありますか。」という質問に「よくある」または「時々ある」と回答した小中学生が39.3%もいました。
本来、夜に十分な睡眠がとれていれば午前中は目がさえて集中力がある時間帯にもかかわらず眠気を訴えているということですので、この調査結果から、子どもたちの5人に2人近くが睡眠不足の可能性があると考えられます。


※調査期間:2021年5月~2022年7月。18,016名の調査結果による。

睡眠講話について

東洋羽毛では子どものころから睡眠について知ってもらおうと小中学生向けに睡眠の出前授業に取り組んでいます。もし、ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
一般社団法人日本睡眠教育機構認定の「睡眠健康指導士」を無料で派遣しています。



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